小さなオールインが入った後、「自分ももう一度レイズできる」とは限りません。まだ行動していない人か、すでに行動した人か。その人が前回対応した額から、いくら増えたかを順番に見ます。
対象はノーリミット・ホールデム(NLH)の大会。TDA2026 v1.1のRules45・49と例解を基準にした架空の計算練習です。レイズする権利を扱う記事で、戦略としてレイズを勧めるものではありません。
例は通常の最小ベット以上で始まり、全員が順番通りに行動しています。最初から最小ベット未満のオールインが入る場面、順序外の行動、曖昧な宣言、ポットリミット・リミットは、この計算例の対象外です。実卓の裁定はディーラーとフロアへ確認します。
まず「合計」と「上乗せ幅」を分ける
このラウンドで400をベットした後、誰かが合計600にすれば、上乗せは600−400=200です。600を追加したという意味ではありません。前のストリートへ出した分や、ポット総額も、この比較には足しません。
別々に確認する2つ
- 完全なベット/レイズ幅: 通常の最小レイズを決める基準。このラウンドで成立した完全なベット・レイズの幅を追う
- 自分に戻ってきた増加分: 現在の合計額から、自分が前回対応した合計額を引いたもの
たとえば400の最初のベットの後なら、完全なレイズに必要な上乗せは少なくとも400です。普通にレイズするなら合計800以上。一方、残りチップが合計600までしかなく、明確にオールインするなら、上乗せ200の短いオールインは可能です。
短いオールインが有効なことと、前の人のレイズ権が再開することは別です。基本的な宣言と追加額はベットとレイズの基本で復習できます。
1回の短いオールイン|未行動のDと、行動済みのA
架空例です。BBは100。フロップでA→B→C→Dの順に行動し、C以外には十分な残りチップがあります。
- Aが400をベットする
- Bが400をコールする
- Cがこのラウンド合計600でオールインする
- まだ行動していないDの番になる
Cの上乗せは200で、基準幅400に届きません。ただしDはまだ行動していないので、フォールド・コールのほか、レイズする権利もあります。Dが完全なレイズをするなら、現在600+基準幅400=最小合計1,000です。
ここでDが600をコールしたとします。Aに戻る増加分は600−400=200。完全な400の増加に届かないので、Aのレイズ権は再開しません。Aは追加200のコールか、フォールドです。Aもコールしたなら、同じ条件のBもレイズできません。
もしDが最小合計1,000へレイズしていたなら、Aには1,000−400=600の増加が戻ります。今度は完全な400以上に向き合うため、Aのレイズ権も再開します。この後の行動で条件は変わる、と分けて考えます。
複数の短いオールインが、積み重なったら
次は別の架空例です。BB100のフロップでA→B→C→D→Eの順。BとDだけが途中でオールインし、ほかの人には十分なチップがあります。
- Aが400をベットする
- Bが合計500でオールインする(上乗せ100)
- Cが500をコールする
- Dが合計800でオールインする(上乗せ300)
- Eが800をコールする
Bの100もDの300も、単独では基準幅400に届きません。しかしAの番へ戻ると、Aが前回ベットした400から、現在800まで400増加しています。必要な幅と同額なので、Aのレイズ権は再開します。
ここでAが800へコールした場合を続けます。次のCは、前回500に対応しており、今回の増加は800−500=300。400に届かないため、Cのレイズ権は再開せず、追加300のコールかフォールドになります。AとCで答えが違う点が大切です。

Aがレイズを選んだ場合は、Cに戻る額も変わります。例えばAが合計1,200へレイズすれば、Cの増加は1,200−500=700で、Cにもレイズ権が戻ります。前の段落の「Cはレイズできない」は、Aがコールした分岐だけの説明です。
短い上乗せで、最小レイズ幅を縮めない
複数の例の現在額が800になっても、基準は最後の完全なベット400のままです。直前の短い上乗せ300を、新しい最小レイズ幅へ置き換えません。
したがってAがレイズするなら、800+400=合計1,200以上。800+300=1,100を通常の最小レイズとはしません。これは必要な合計額で、Aの前回400からなら追加で出す額は800です。
大きな完全レイズが別に入れば基準幅も更新されます。本稿の例にはその途中変更を入れていません。誰かの総額だけを見て判断せず、行動の履歴をたどりましょう。
「50%」という数字は、何の基準かを確認する
TDAには50%を使う規定がありますが、NLHの短いオールイン後の再開を「半分増えればよい」とする規則ではありません。
- 不完全な額の扱い: Rule45は、通常のレイズに足りない額を出した場合などの解釈・補正を定めています。全額オールインか、宣言は何か、単一の大きいチップか等も関係します
- リミットの再開: Rule49Bの50%基準はリミット用です。今回のノーリミットの例へ混ぜません
具体的には、Aの1,000ベットに、Bが十分なチップを残し、先に「レイズ」や「コール」と言わず額だけ「1,500」と宣言した例では、上乗せ500が必要幅1,000の50%に達するため、TDAの通常の補正は合計2,000の最小レイズです。宣言の曖昧さや別の行動がない教材として考えます。
一方、Bの残り全部が1,500で、明確にオールインした場合、その上乗せ500だけでは、すでに1,000へ対応した人のレイズ権は再開しません。「50%だから同じ扱い」とまとめないでください。
ブラインドを置いただけなら、まだ選択していない
プリフロップでBBを強制的に置くことは、そのラウンドで自分の選択としてコールしたことと同じではありません。BBがまだ自分の番で行動していなければ、短いオールインに対しても、通常はレイズの選択肢を持っています。先にコールした人と分けて確認します。
実際の卓では、計算アプリや外部の助言に頼る前にスタッフへ確認してください。チップを動かさず「現在の合計額と、私に残っている選択肢を確認したいです」と伝えると、額と行動履歴の両方を確認してもらえます。具体的なアクション語だけを口にして、意図しない宣言と受け取られないようにしましょう。
理解できたか、3問チェック
- A400ベット、B400コール、C600オールイン。未行動のDが完全なレイズをする最小合計は?
- 複数の例でAが800へコールした後、前回500をコールしたCにもレイズ権は戻る?
- NLHで、必要な幅の50%だけ増えた短いオールインなら、行動済みの人は必ずレイズできる?
答えと理由
- 1,000。 現在600に、最後の完全な基準幅400を足します。
- 戻りません。 Cの増加は800−500=300で、必要な400未満です。
- いいえ。 この再開判断にリミットの50%基準や通常の額の補正規定を流用しません。
復習では、各人の「前回の合計額」と「今の合計額」を1行ずつ残してください。ポットの配分を扱うサイドポットとは別の問題です。今回は、誰がもう一度レイズできるかを確認できれば十分です。
参考にした一次情報
- Poker TDA「2026 Rules Version 1.1」公式配布案内:原本8–9頁のRules45・49、20頁のRule45例解、22–23頁のRule49例解。最低額、個人ごとの再開、短いオールインの累積、リミットとの区別。
- PokerStars Live「Tournament Poker Rules」:TDAに従う運営であっても追加規則があることを確認。参加大会の採用版は現地確認が必要。
- WSOP「2026 Official Tournament Rules」:2026年大会規則95–96(22頁)にも短いオールインと複数累積の規定がある。TDAの例を全会場に自動適用する根拠にはしない。
内容確認日:2026年10月6日。TDAはv1.1原本の版表示と該当条文・例解を確認しました。公式HTMLのv1.0見出しとは区別しています。ここでの説明は参加大会の裁定を代行するものではありません。
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