FTでセットをオールインする理由|88の実戦から考えるバリューレイズ

FTで88がセットになった実戦。BTN約30BB対BB約14BBでターンのバリュー判断を考える

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フロップでセットができると、「このハンドは最後まで勝負したい」と感じやすくなります。しかし、次のカードで相手のストレートが完成したときも、同じようにチップを入れてよいのでしょうか。

今回は、9人のファイナルテーブル(FT)で、ボタンの88がセットになった実戦を振り返ります。テーマは「負けたから悪いプレイ」ではなく、「自分より弱いどのハンドからコールをもらうつもりだったか」です。

本人提供のハンド記録と当時の記憶をもとにした検討です。スタックは概数で、ソルバーは使用していません。賞金配分と全員の正確なスタックが揃っていないため、ICMを含む最善手は断定しません。

実戦の状況:BTNの88、相手はBB

  • 種目:テキサスホールデムのMTT、FTは9人
  • 自分:BTN、8♥8♦、開始スタックは記憶では約30BB
  • 相手:BB、開始スタックは記憶では約14BB。相手の傾向は不明
  • 強制ベット:SB 0.5BB、BB 1BB、BBアンティ1BB
  • プリフロップ:自分が2BBにレイズ、BBがコール。ほかのプレイヤーはフォールド

本人はFT進出時にチップリーダーでした。ただし、FT開始時とこのハンドの時点は分けて考えます。「有効スタックが14BB」と「自分も14BBしか持っていない」は同じではありません。ここでは、自分が相手をカバーしていたという補足を反映します。

ルールやポジションを確認したい方は、先にテキサスホールデムの基本ルールをどうぞ。

フロップ:Q♥ T♦ 8♣でセット。コールにはどんな意味がある?

ポット5.5BBに、BBが2.5BBを先にベット。自分はコールしました。8が3枚揃ったボトムセットは強い役ですが、この時点でJ9にはストレートができています。QQ・TTの上のセットも、プリフロップのコールだけを理由に完全には除外できません。

一方、QTの二対、Qを持つワンペア、KJなどのストレートドローに対しては、利益を取れる可能性があります。相手の実際のカードをまだ知らない段階では、こうした複数の候補をまとめて考えます。

コールは「弱い手を残す」選択

コールなら、相手の弱いベットやブラフを残したままターンへ進めます。自分はポジションがあるため、相手の次のアクションを見て判断できます。ただし、A・K・J・9など、相手の候補や今後の支払いに影響するカードもあります。

レイズは「今、何から払ってもらうか」を考える

弱い完成役やドローがレイズにもついてくる相手なら、フロップで大きくする案もあります。今回の計算上、フロップ開始時の相手の残りは11BB、ポットは5.5BBで、実効SPRは2です。SPRは「残りスタック÷ポット」のこと。浅いため、レイズ後に残るチップも意識する必要があります。

ただし「セットだから必ずレイズ」「ドローに引かれたからコールが悪い」とは言えません。レイズで弱い手だけを降ろしてしまうこともあります。比較すべきなのは、各選択で相手のどのハンドが残るかです。

ターン:A♠。Axの二対からコールを狙ったオールイン

フロップのコール後、ポットは10.5BB。ターンのA♠に、BBが5BBをベットしました。自分はオールインし、BBも残りをコールしました。

本人の狙いは、相手をカバーしていて、自分にはセットがあるため、Aが絡む二対などからコールをもらいたいというものでした。これは、弱いハンドから利益を取ろうとする「バリュー」の発想です。

ここで大切なのは、Aによって相手の範囲がどう変わるか。KJは新しくストレートになり、J9はフロップからストレートです。一方でAQ・ATなどが二対になってベットしている可能性もあります。A8も候補ですが、場と自分の手札で8が3枚見えているので、残る8は1枚だけです。

「Aが出たからAx」だけで終わらせない

相手はフロップでも先にベットしています。したがって、考えたいのは単なるAxの一覧ではなく、「フロップでベットし、ターンも5BBを打ち、そのうえでレイズにコールするハンド」です。

AQ・ATなどの二対や一部のペア+ドローまでコールしてくれるなら、オールインに価値がある余地があります。反対に、弱い手は降りてストレートや上のセットばかりが残るなら、オールインの価値は下がります。ブラフを多く含む相手なら、コールしてそれを残す意味もあります。相手の傾向が不明なため、今回はどちらかを確定できません。

Q・T・8・Aのボードで88のセットが、二対などの弱い候補とKJ・J9・上のセットという強い候補の両方を検討する図
弱い手がどれだけ「ベットし、レイズにもコールするか」を考える。図の候補は頻度を確定したレンジではありません。

数字で確認:カバーしていても、リスクはなくならない

以下は、双方の開始スタックを強制ベット前の30BB・14BBとし、記録どおりのベット額で計算した場合です。実際のスタックが概数である点には注意してください。

  • ターンで相手が5BBを打った直後:ポット15.5BB、相手の残り3.5BB
  • 自分が相手に合わせて実際に追加で争う額:8.5BB
  • 両者の投入を揃えた最終ポット:27.5BB
  • このハンドに自分が投入する合計:13BB。負けた場合も約17BB残る計算

自分が残り全額をオールインと宣言しても、相手が払えない分は戻ります。元の記録にある「自分も開始14BB、1BB残り」は、個別スタック未入力時の仮定です。今回の実戦をそのまま表す数字としては使いません。

相手は最後に3.5BBを払うと、合計27.5BBのポットを争います。単純な必要勝率は3.5÷27.5=約12.7%。小さな追加額なので、弱い手から支払ってもらえる余地はあります。ただし、相手から見たこちらの手の範囲や賞金事情次第で、二対が必ずコールするわけではありません。

自分の側では、5BBをコールする単純な必要勝率は5÷20.5=約24.4%。ただしコール後も相手に3.5BB残るため、この割合だけで結論は出ません。また、実効8.5BBを押して必ずコールされる単純モデルなら、フォールドと比較した損益分岐は8.5÷27.5=約30.9%です。これは「コールより押すほうがよい」と示す数字ではありません。

FTでは獲得チップと失うチップを賞金価値で考えるICMも関係します。カバーしていれば今回負けても即敗退ではありませんが、今後の選択肢を減らすリスクは残ります。賞金配分と全員のスタックが不明な状態で、「カバーしているから押せる」とだけ判断しないようにします。

結果はK♠J♠。負けた結果と、判断の評価を分ける

相手の手札はK♠J♠で、ターンにストレートが完成していました。リバーは7♦で、今回は相手が勝ちました。相手はターンでオールイン済みなので、リバーに追加のベット判断はありません。

カードが分かった後の検算では、ターンの自分の逆転カードはA・Q・Tが各3枚と、残る8が1枚の計10枚。既知の8枚を除く44枚中10枚で、勝率は約22.7%です。ただし、これは相手の手を知った後の数値です。判断時にKJだけを読めていたことにはしません。なお、相手が上のセットなら同じ10アウトではなく、逆転は残る8の1枚だけです。

このハンドは「セットで負けたからオールインが失敗」という教材ではありません。本人が狙った二対などから、どの程度コールを受けられたかを振り返る教材です。

次の実戦に持ち帰る3つの確認

  1. 自分の役より弱く、コールしてくれる具体的な手は何か。「何となくA」ではなく、AQ・ATなどを挙げてみる。
  2. その手は、ここまでのアクションと矛盾しないか。フロップからのベットを含めて考える。
  3. 相手をカバーしていても、負けたあとのスタックはどうなるか。有効スタックと自分の総スタックを分けて記録する。

自分のハンドも、Poker Reviewでアクションとスタックを記録してから振り返ってみてください。基本の進み方を体験したい方は初心者向け学習アプリへ、次に学ぶテーマを探す方は学習ロードマップへ進めます。

計算・考え方の参考資料