マーケティングについて学ぶと、多くのフレームワークや考えるべき観点などが出てきます。正直多すぎて、それぞれの分析で何が出来るのか、どれがいつ使えるかわからなくなりますよね。筆者もその一人で、英単語とカタカナの嵐で混乱していました。
ここでは、マーケティングの各プロセスで使える分析方法を、マーケティングの流れにそって各プロセスに分けてご紹介します。それぞれの単語の意味や、何を目的としているのか、など細かく説明しているので、ここでマーケティングの土台を完成させましょう。
また、マーケティングを学ぶうえで、知っておくべき消費者の行動モデルも一緒に説明しています。
これらのフレームワークや消費者行動モデルは、知っていることが当たり前とされることが多いのでしっかり理解しておきましょう。
思考・課題抽出のプロセス
まず、マーケティングの流れの中で最初のステップ「考える」段階から見ていきましょう。マーケティングの考え方として知っておくべき言葉や、市場や課題を考える際に使える手法についてお伝えします。
MECE
MECEは「ミーシー」や「メーシー」と読みます。MECEはMutually Exclusive and Collectively Exhaustive 「相互に排他的で、完全な集合体」という意味です。わかりやすく言えば「漏れも被りもない状態」となります。
これはマーケティング全体を通して覚えておくべき考えです。
例えば、日本を都道府県単位で「都市」と「農村」で分けたとします。これだと都市近郊地域のような、都市と農村の中間の地域がどちらに入るかわからず、漏れていることになります。また、東京都のように都市部と農村部の差が激しい地域も多く、そういった地域は被ってしまいますね。
今回の例でいえば、区域分けを市町村単位にし、人口で区別することで近郊地域の漏れも、都市部と農村部の差が大きい地域の被りも防ぐことができます。
こういった漏れや被りを防いで、全ての情報を網羅する考え方が「MECE」です。
ロジックツリー
ロジックツリーは、一つの課題やテーマから考えられる課題や原因を挙げて、そこからまた同じように広げていく考え方です。テーマをどんどん枝分かれさせることから、木に見立てて、論理の木「ロジックツリー」と呼ばれています。
原点は大きな課題ですが、枝分かれを繰り返すことでどんどんその課題を小さくしていきます。
捉えるべき課題を小さくすることで、原因を突き詰めたり問題解決の道筋が見えたりします。
自社理解・市場把握のプロセス
基本の考え方を身に着け、課題が見えてきたら、次は現状を把握しましょう。ここがマーケティングの中で一番大事なプロセスです。故に多くのフレームワークがあり、互いに支えあってややこしくなっています。
重要プロセスであるからこそ、ちゃんと覚えておきましょう。
3C分析
3C分析は3者を分析し、市場を把握する分析方法です。
- Customer:顧客・市場
- Competitor:競合
- Company:自社
大切なのは自社のことも含め、客観視すること。そうすることで、ニーズや、自社と競合の弱み強みなどをフラットに見つめることができます。
また、第三者目線で分析することで、市場内での自社の立ち位置も明確になります。
3Cはマーケティングの中でもよく出てくる言葉ですし、後のSTP分析やSWOT分析に活用できるので、絶対に知っておきましょう。
STP分析
STPとは以下の頭文字を取ったものです。
- Segmentationセグメンテーション:市場の細分化
- Targetingターゲッティング:狙うべき市場の決定
- Positioningポジショニング:自社の位置づけ
自社理解・市場把握のプロセスにおいては、主にセグメンテーションとターゲッティングが大事です。
市場を細分化することで、ニーズを探ることやペルソナ像を絞り込むことができます。また、セグメンテーションすることで狙うべき市場や狙い方を定められます。
後述の企画・戦略立案のプロセスでは、ポジショニングが主に役立ちます。
市場の中で他社や自社が今どういう立場にいるのかを可視化し、明確にすることがポイント。そうすることで自社が狙うべき立ち位置がわかりやすくなり、競争することを避けることができます。
STPはセグメンテーションやターゲッティングなど、それぞれが単体で使われることもあるので押さえておきましょう。
STP分析についてはこちらでもっと掘り下げてまとめているので、よろしければ併せてご覧ください。
https://web.raptorperch.co.jp/stp/
SWOT分析
SWOT分析はこれら4項目の頭文字を取ったものです。
- Strength:強み
- Weakness:弱み
- Opportunity:機会
- Threat:脅威
SWOT分析は内的環境と外的環境のメリット・デメリットをそれぞれ考え、市場機会を探る手法です。
大事ことは、内的要因も外的要因もどちらも「客観的に」評価すること。第三者目線でみることで、自社と市場を正しく分析することができ、今後の視点を考えるのに役に立ちます。
また、SWOTそれぞれの項目を分析した後、それぞれを組み合わせて戦略の方向性を探る「クロスSWOT」分析という方法も有効です。
SWOT分析をするうえで、後述の5フォース分析やPEST分析なども活用することができます。
5フォース分析
5フォース(要因)分析とは、以下の5つが自社にどれほどの脅威やリスクになるのかを分析するものです。
- 競争業者:既存の同業他社
- 新規事業参入者:他の業界・市場にいたが新たにライバルとなる存在
- 代替品:別の市場の商品で代わりになりそうなもの
- 売り手:原材料の仕入れや商談の交渉、売り場確保などの力
- 買い手:顧客
また、SWOT分析で説明した通り、この5フォース分析は外部環境の脅威を分析するのでSWOT分析に活かすことができます。5つの観点から洗い出すことでMECEが可能になります。
PEST分析
PEST分析は以下の外的要因を調べるフレームワークです。
- Politics:政治
- Economy:経済
- Society:社会
- Technology:技術
5フォース分析と同じく外的要因を調べるものですが、PEST分析は5フォース分析よりもっと広い、社会をとりまく環境を調べます。マクロ視点でみることで、業界全体を把握することができます。
企画・戦略立案のプロセス
現状を把握したら、いよいよ企画立案です。市場や顧客の課題に適した商品を、自社の強みを最大限に活かす方法を考えていくためのフレームワークをご紹介します。
バリューチェーン分析
バリューチェーンは直訳すれば「価値の連鎖」です。原材料の調達から、商品が顧客に届くまでの、企業が行う一連の活動をバリューチェーンと言います。
そのバリューチェーンの中で、付加価値が生じる過程やコストがかかっている過程を可視化するのがバリューチェーン分析です。
バリューチェーンを主活動と支援活動の2つに分けて考えます。主活動とは、商品化やマーケティングなど、直接利益につながる企業の活動のこと。支援活動は人事や労務管理、インフラ整備といった、企業の利益には直接関係ないけれど必要な仕事です。
主活動と支援活動をそれぞれ深堀することで、自社の強みや弱みが浮き彫りになったり、コスト削減の道が見えたりします。
4P/4C分析
4P分析はマーケティングミックスとも言われる手法です。以下の4項目を組み合わせることでビジネスの成果の実現を目指します。
- Product:製品
- Price:価格
- Place:流通
- Promotion:販促
4Pは企業視点ですが、これを顧客視点に置き換えた4Cという考え方もあります。
- Customer Value and Solution:価値と解決方法
- Cost to the Customer:顧客にとってのコスト
- Convenience:利便性
- Communication:企業とのコミュニケーション
「お客様の立場になって考える」とはまさにこのこと。近年特に顧客重視になっているのでこの観点は大事になってきます。
SMART
SMARTは適切な目標を設定するために、考慮すべき5項目をまとめたものです。
- Specific:具体的
- Measurable:測定可能
- Attainable:達成可能
- Result-base:結果重視
- Time-oriented:時間制約
例えば、ダイエットをしようとして目標を「痩せる」と設定したとしても、具体性がなく何をもって「痩せた」というのかわかりませんよね。
SMARTに則って目標を立てると「3か月後までに体重を3kg落とす」といった具合になります。これなら具体的ですし、体重計で測れますし、期限も設けられています。
また、3か月で3kgならできそうな気がしませんか?これが3か月で10kg落とす、という目標だったら無理そうですよね。
つまり、やるべきことを明確にした実現できそうな数字的目標を、期限を設けて決めましょうというものがSMARTです。
計画実行・改善のプロセス
計画を立てたらあとはそれを実行に移すだけです。ですが、ただ実行して終わりではありません。
効率よく実行し、改善を重ね、どんどん良くして今後につなげていきましょう。
ガントチャート
ガントチャートとは、個人やチームが行う作業を納期とともにまとめたものです。
誰がいつからいつまでこの作業をしている、というのを書きます。
全員の分をまとめるので、全体の流れの把握や遅れが出たときの原因究明に役立ちます。
PDCAサイクル
PDCAサイクルとはPlan:計画、Do:実行、Check:修正、Act:改善実行を繰り返し行うことです。
PDCAサイクルを回しブラッシュアップし続けることが目的なので、PDCAサイクルは「回し続ける」ことが大事です。
また、PDCAサイクルを速く回すことで、問題が起きてもその問題が大きくなる前に解決することができます。
KPT
KPTとは「良かったところはKeep(そのまま継続)しProblem(課題や悪かったところ)は改善し、Try(次に活かす)」という流れのことです。英語を使っていますが、簡単にいえば「反省は大事」ということ。
PDCAサイクルのC→Aあたりの中身を説明したものです。良かった点はしっかり伸ばして次に活かしましょう。
消費者行動モデル
最後に、顧客が商品情報を得てから購入するまでの流れを示しているものについてお伝えします。無意識で行っているものですが、どういうプロセスを経て購入に至っているのかをまとめたものです。
これを理解しておくと、情報の出し方やどこにアプローチすべきなのかなどがわかってきます。時代の流れによって変わるので、社会背景と併せて理解しましょう。
AIDMA
AIDMAは消費者が購入するまでのプロセスを表したもので最も有名なものです。
広告やテレビ番組で紹介されているのを見て、その商品情報を「発見」します。
次に「興味」を抱き、欲しいという「欲求」が高まります。そうすると「記憶」にも残ります。
そして購買「行動」に出ます。
「Attention発見」が認知の段階、「Interest興味」から「Memory記憶」が感情の段階、「Act行動」が行動の段階と分けられます。
AIDMAは比較的昔の行動モデルなので、各段階の中身が、新しい行動モデルのAISASと異なります。
AISAS
AISASはインターネットが普及した社会での行動モデルです。
ここで重要なのは「Search検索」と「Share共有」です。
感情の段階は「Interest興味」と「Search検索」、行動の段階が「Act行動」と「Share共有」のそれぞれ2つずつになっています。
商品情報を得て興味を持ったら、他の人がそれについてどのように評価しているのか「検索」します。つまり、企業の伝えたいことだけが伝えられる時代ではなくなったということ。
商品を購入した後、今度は自分がそれについて評価し「共有」します。他の人の感想を聞いた後は、次は自分が感想を伝える番になるのです。
インターネット、特にSNSの発達に伴い、個人がインターネットを通じ情報を発信できる機会が増加したため、このような新しい行動パターンが生まれました。
企業の情報だけでなく、一般人の「口コミ」も効果的であることを示しています。
マーケティングに使えるフレームワークまとめ
マーケティングにおける各プロセスで、使えるフレームワークを厳選してご紹介しましたがいかがでしたか?
他のプロセスにまたがって使えるものや他のフレームワークに活かせるものなど、フレームワークの種類は様々です。
もちろん、ここで紹介しきれなかったものもたくさんあります。
ですが、マーケティングの大体の流れや、どのフレームワークがいつ活かせるか、などはおおよそ決まっています。
多くの分析方法や考え方を学ぶと、つい多用してしまいますが、それぞれがいつ使えるかは決まっているので、乱用はNGです。無理に使おうとすると、本来の意図を見失ったり、却って逆方向に導いてしまったりします。
フレームワークは適した手段を適切なタイミングで使いましょう。
正しく使えば、最高のマーケティングへ導いてくれます。