Googleなどの検索エンジンで「マーケティング」と打ってスペースを入れると、よく「企画 違い」「広報 違い」といった言葉が見受けられます。つまり、それだけ多くの人がマーケティングと他の仕事が混同しやすいということ。
それもそのはず。企画も広報も、全てマーケティングに含まれていることだからです。
なぜ一緒にされやすいのかということと、よく一緒にされがちな企画、営業、販売促進(Sales Promotion 以下SP)、広報との違いは何かを、マーケティングそのものの説明と併せてお伝えします。
マーケティングの本質を掴めば、実はとてもわかりやすいのです。
そもそも「マーケティング」とは
まず違いをお伝えする前に、マーケティングについてちゃんと理解しておきましょう。
企業や団体、個人によって多少異なりますが、マーケティングとは「顧客本来のニーズを理解し、価値のあるものを提供し、売り込まずとも自然と売れる仕組みを作り、顧客や社会全体の生活向上を目指す一連の流れ」です。もっと簡単にすると「物が売れる仕組みづくり」です。
そのために、まず市場やライバル企業、自社の調査をし、ニーズや商品の動向を探ります。ニーズを満たす商品、「売れるもの」を作ります。提供して終わりでなく、その後顧客や社会の反応や要望・感想を聞き、次につなげるのがマーケティングの流れとなります。マーケティングの目的は顧客満足度を上げたり新規顧客を獲得したりして、企業や社会の成長・向上すること。
また、マーケティングを知るうえで欠かせないのが「マーケティングの4P」です。
マーケティングの4P
- Product(製品)… 顧客に求められる製品・サービスを作り提供する。他社と差別化をすることが大事。
- Price(価格)…手に取ってもらえる適切な価格を設定する。他社と差別化ができていないと価格競争に陥る。
- Place(流通)…購入しやすく提供に適している場所で販売する。ターゲットに合わせて、実店舗を構えるのかECサイト(通信販売)にするかなど考える。
- Promotion(販売促進)…商品の魅力や価値を伝える。広告を出す、街頭でチラシ入りティッシュを配る、SNSでインフルエンサーに拡散してもらう、など、最近は特に多様化している。
これらはマーケティングを行う上で重要な観点です。どの参考書を読んでも、どのサイトを見ても必ず書かれているので理解しておきましょう。中でも、他社との差別化やターゲットに合わせた活動は特に重要です。
そしてこのマーケティングの4Pこそが、マーケティングと企画やSPなどのそれ以外の言葉を紛らわしくしている原因とも言えます。
これを見てわかる通り、「製品」「販売促進」といった、企画やSPにかかわる事柄が含まれています。つまり、冒頭にお伝えした通り、「『マーケティングと企画の違い」や『マーケティングとSPの違い』はなにか」と問われると、その答えは「企画やSP、広報といった業務はマーケティング業務の一環である」となります。
ですが「マーケティングにおける企画」と「企画」の違い、では考え方の根本が違いますし、SPや広報、営業も同様のことが言えます。
マーケティングについてもう少し詳しくご紹介している記事もありますので、よろしければ併せてご覧ください。
https://web.raptorperch.co.jp/marketing/
それぞれの仕事内容から見る「違い」
次に、マーケティングとの仕事内容の違いをお伝えします。違いを知りたい人はおそらくここを知りたいのではないでしょうか?
ですが先述の通り、マーケティングとそれ以外の仕事はそもそもが違っていて、マーケティングの中に企画やSPといった仕事が含まれているのです。
ここでは実際の仕事の中身だけでなく、考え方の違いについてもお伝えします。
企画
たくさんアイデアを出し、性能や消費者に提供できる価値を決め、最終的に商品化を目指すのが企画の仕事です。新たな商品を生みだし、消費者に提供するため、「次はどんなものがヒットするか」といった「先読み」が大事になります。新しいアイデアを基に、関連商品の動向や消費者の動向を調査し、売れるであろう商品をゼロから考えます。
マーケティングにおける企画との違いは、その商品を企画するベースは何か、ということと、いつ売れるものなのか、ということです。通常の企画はアイデアベースですが、マーケティングはまず市場調査を行います。そこで「現状」の課題、「今」必要とされているものを探ります。その課題を解決するために考えるのが「マーケティング企画」。企画は先読みをすることが大事ですが、マーケティングでは「『今を』良くすること」が求められます。
どちらも「消費者に提供する商品を考える」という同じ作業ですが、そのベースと対象とすべき時間軸が異なります。
営業
営業の仕事は「商品を売る」ことです。そのために商談をしたり、お客様に直接声をかけたりします。目の前のお客様にクロージングし、買ってもらう、もしくは契約してもらうことが営業です。
クロージングとは購入してもらうためにお客様に近づいて(close)アプローチすることです。大事なのは「目の前のお客様」に「購入を促し」買ってもらうこと。目の前のお客様というのは文字通り目の前にいる人のことです。「今」自分が話しかけている相手に買ってもらうことを目的としています。
マーケティングとの違いは「売り込む」という点です。マーケティングは「売れる仕組みづくり」「売り込みを不要とすること」とも言われています。マーケティングの本質は「ニーズを理解する」こと。そのために市場を調査し、潜在的なニーズを追及します。マーケティングの対象はこの「潜在的な」顧客です。
たとえば、ネズミ捕りを買いに来たお客様がいるとしましょう。営業の仕事は性能のいいネズミ捕りを紹介します。どういう仕組みでネズミを捕るのか、捕獲したあと逃げられない工夫などを説明します。一方マーケティング的な考え方をすると、本来の目的はネズミを「捕まえる」ことなのでしょうか?「ネズミがいない環境にする」ことをお客様は求めているかもしれません。そこで、ここで提案するのはネズミ捕りではなく、ネズミがいなくなるための、毒入りのエサや敷地に入って来られないようにするシートなどが挙げられます。
商品を売るのが営業で、潜在的ニーズを理解し、それに適したものを提供するのがマーケティングです。
販売促進(SP)
SPの目的は潜在層や顧客にアプローチし、企業や商品の認知度を高めることです。その活動の例として、店内POPやポスティング、SNSなどがあります。時代やターゲットに合わせて、適切な手段を選ぶ必要があります。
シニア向けの健康食品のSPとしてSNS告知は不向きですよね。逆に若者向けのアパレルのチラシがポストに入っているのを見たことはあるでしょうか?インターネットやSNSが発達した現代において、その手法はさらに拡大しているため、より適切な方法をとることが大事になっています。
マーケティングの4Pの4つめにPromotion(販売促進)とある通り、マーケティングの中でSPは重要な項目となっています。そのため他の仕事よりマーケティングとの考え方の差はありません。マーケティングもSPも「潜在」ニーズに呼びかけ、新規顧客の開拓やリピートの促進を目的としています。
広報
広報は大きく2つ、社内広報と社外広報がありますが、今回は社外広報のことをお伝えします。
広報は「情報をメディアに無料で取り上げてもらう」ことが仕事です。有料で情報を載せてもらうものは広告になります。情報を載せる場所や、テレビやラジオの放送時間の一部を買い取って、情報を大衆に届けるのが広告です。
一方広報は「無料」というのがカギです。メディア側に「ぜひうちの新聞やテレビで伝えたい!」と思う情報を流します。広告は自分たちの好きな情報を届けることができますが、そのために莫大な金額がかかります。一方広報は、情報はメディアの編集次第にはなりますが、タダで届けることができます。
メディアに取り上げてもらうために、プレスリリースでメディア向けに情報を公開したり、工場見学などを行ったりするのが広報の仕事です。メディアを通じた会社の顔となります。
広報の目的は「情報を発信し、企業や商品の認知度をあげること」です。つまり、情報が発信され大衆に届けばOK。実はこれがマーケティングと広報の大きな違いです。マーケティングでは、情報発信は手段の一つで、その先の「売れる」ことを目的としています。情報発信をして終わりでなく、その後収益につながっているかどうかも重視するのがマーケティングです。
企業内での部署
ここまで様々な仕事とマーケティングの違いを見てきました。では一体マーケティングを担っている部署はどこでしょうか?企画、営業、SP、広報はなんとなく想像つきますが、マーケティングはどうでしょうか?
企業によって様々ですが、マーケティングは他の仕事と兼任となっていることがほとんどです(中には独立しているところもあります)。これがまたマーケティングをややこしくしている原因の一つです。
まとめられている部署は企画や広告、広報、総務など、本当に様々です。企画や広報のように4Pのポイントとなる業務と同じ部署でも問題はありません。ですが、繰り返している通りマーケティングとは「物が売れる仕組みづくり」のこと。企画も広報もマーケティングの一要素なのです。異なる部署だから気にしなくていい、ではなく、全てが一つの流れであることを覚えておきましょう。
マーケティングと企画や広報等の違いと紛らわしい理由
今までの話をまとめると
- マーケティングとは「物が売れる仕組みづくり」のこと
- マーケティングの本質は「顧客の潜在的なニーズ」を理解すること
- マーケティングの4P「Product(製品)」「Price(価格)」「Pace(流通)」「Promotion(販売促進)」が大事
- マーケティングと混同されがちな企画やSP、広報などは、マーケティングの一環である
- マーケティングにおける「企画」や「広報」と、通常の「企画」や「広報」などは基となる考え方が異なる
ここまでいろいろお伝えしましたが、以前よりは少しはイメージが掴めてきたのではないでしょうか?
マーケティングの中に企画や広報の仕事があったり、企業によって部署が異なったりするせいでややこしく感じるかもしれません。ですが、本質は「ニーズを理解すること」「今必要とされているものを提供すること」です。マーケティングの考えはこれらがベースになっていることと、企画やSPがマーケティングの業務の一つであることを理解していればそう難しくありません。